慢性腎臓病ステージ4の診断を受けた我が家の愛猫姫ちゃん。
診断を聞いた時はショックでしたが、その後携帯にかじりつき色々な情報を入れていました。
同じような方の助けになればと思い、情報をまとめてみました。
我が家の慢性腎臓病ステージ4と診断と診断されたときのお話はこちら↓
Contents
「慢性腎臓病(慢性腎不全)」はどんな病気?
腎臓はすごーく簡単に言うと、血液を濾過して尿(おしっこ)を作るところです。
左右2つあり、1つ失っても健康な腎臓なら何とかやっていけるもので、人間でも腎臓移植することもありますよね。
もう少し詳しく説明すると、体内の老廃物をおしっことして体外に出す、体の水分バランスを調整、血液をつくるホルモンをだす、ということをしています。
腎臓の主な働き
・血液から尿をつくり、老廃物や毒素を尿の中に排泄
・血圧を調節する
・ナトリウムやカリウムなどの血液中のイオンバランスを保つ
・造血ホルモンを分泌し血液(赤血球)をつくる
腎臓病(腎不全)とは、腎臓がダメージを受けて働けなくなった状態、それが続くと慢性腎臓病(慢性腎不全)と言われる状態になります。
原因は色々言われていますが、老猫の死因としては癌と腎不全がトップにくる(集計によって情報は分かれています)ほど、メジャーなものです。
かかりつけの獣医さんにも、「どれだけ気をつけて育てても、腎臓病はなる子はなる」と言われました…涙
かかりやすい猫は?
調べていくと下記のような記載がありました。
我が家のソマリはアビシニアンの長毛種なので、リスクが高いのかな、と。
メインクーン、アビシニアン、シャム、ロシアンブルー、バーミーズ
→家族性(※)腎症から慢性腎臓病に移行するとの報告
ヒマラヤンやペルシャ
→多発性嚢胞腎になりやすい遺伝子
しかし、結論としては猫全般に高齢になるとかかりやすい、さらに先天的に(生まれつき)腎臓の機能が弱い事もある、との事で、全ての猫にリスクがあるようです。
予防方法は?
ありません。
色々探しましたが、健康的な食事や適度な運動・・・としか。
あとは、定期的に健康診断を受けるようにすること。
しかし、健康診断も7歳すぎたら、と言われますが、若くして腎臓病を患う猫も少なくないので(実際うちの猫は7歳で発覚。そろそろ健康診断をと思っていた矢先でした)予防というのは難しいようです。
「慢性腎臓病」のステージ分類は?
猫の慢性腎臓病は、IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)の慢性腎臓病ガイドラインによって下記4つのステージに分けられています。
犬猫の慢性腎臓病の病期分類
ステージ分類 | 残存腎機能 | 血液検査 (血清CREA値) |
尿検査 (尿比重) |
臨床症状 |
---|---|---|---|---|
ステージ1 | 33% | 正常 (犬:<1.4 mg/dl) (猫:<1.6 mg/dl) |
正常〜 低比重尿・蛋白尿 (1.028〜1.050) |
なし |
ステージ2 | 25% | 正常〜軽度上昇 (犬:1.4〜2.0mg/dl) (猫:1.6〜2.8mg/dl) |
低比重尿・蛋白尿 (1.017〜1.032) |
なし、もしくは軽度 (多飲多尿等) |
ステージ3 | <10% | 軽度〜中等度上昇 (犬:2.1〜5.0mg/dl) (猫:2.9〜5.0 mg/dl) |
低比重尿・蛋白尿 (1.012〜1.021) |
さまざまな臨床症状 (食欲不振・嘔吐・脱水など)が見られる |
ステージ4 | <5% | 重度上昇 (犬:5.0< mg/dl) (猫:5.0< mg/dl) |
低比重尿・蛋白尿 (1.010〜1.018) |
積極的治療がないと生命維持が困難 |
(IRIS:国際獣医腎臓病研究グループ)
診断基準ではクレアチニン(CRE)が基準となっていますが、血液検査で測定できる尿素窒素(BUN)、リン(P)の値も老廃物の指標として診断に使われています。
「慢性腎臓病」の症状は?
症状としてみられるのは、消化器系の症状です。
消化器系全般に症状があらわれるので、食欲不振、吐き気、嘔吐、口腔内潰瘍、胃炎、下痢、血便やメレナ(黒色便)など多岐に渡ります。
その他にも、多飲多尿、体重減少、筋肉量の低下、低体温、活動性の低下、高血圧、貧血といった症状もあります。
うちの猫の場合は、ステージ4でしたが、上記の多くの症状がみられました。
ちなみに回復しないといわれる腎臓病ですが、うちの猫の現状としては、補液を続けることでこの症状の大半はみられなくなり小康状態を保っています。
全体的に数値も改善しつつあり、貧血も合わせて改善しているので、このサイトを読んでいる方も、まだ諦めないでください!
多飲多尿
文字通り、たくさん水を飲むようになり、たくさんおしっこをします。
健康な猫の場合、おおよその飲水量の目安は、50ml/kg/1日 おしっこの量は 50ml/kg/日以下です。
うちの猫の場合は・・・
蛇口から飲むのが大好きでどれだけ飲んでいるかは不明です。
子猫時代から、かなり水を飲む子だったので、多飲については気づきませんでした。
多尿に関しては、掃除の時、急にデオトイレのシーツに吸水できないほどのおしっこをしていて気づきました。
しかし、その時はステージ4と診断される1~2週間前だったので、うちの猫は多尿の症状が現れるのは遅かったです。
体重減少
数週間~数ヶ月の間に体重が減少していくことがあります。
消化器系の症状から食欲低下によるもの、その他にも慢性腎臓病が消耗性疾患であることも原因とのことです。
うちの猫の場合は・・・
数ヶ月かけてじわじわと体重が減っていっていました。
ただ、元々だっこは嫌いなこと(隣に座るのが好き)、長毛種ということもあり、気付くのが遅くなりました。
食欲不振が大きな原因だったのですが、よくある好き嫌いかと思っていたことも敗因です。
定期的な体重測定をオススメします。
人間でも毎日会っていると太った痩せたに気づかないですしね。
激ヤセから一気に体重を戻しつつある、我が家の猫の大好きごはんはこちら↓(腎臓病食ではありません)
嘔吐
消化器系に現れる症状の代表的なものです。
ただし、その他の病気でも現れやすいこと、毛玉を吐く、嘔吐しやすい体質などもあるので、嘔吐だけで腎臓病の判断はできません。
うちの猫の場合は・・・
元々子猫の頃から、嘔吐するタイプの猫でした。
そのため、腎臓病との関連性は不明です。
実際、カリカリを勢いよく食べる⇒吐く、というタイプだったので、腎臓病がわかりウエットなど嗜好性の高いご飯が増えた今、以前より吐く回数が減りました。
貧血
腎臓の機能として、血液(赤血球)を作る造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌があります。
当然腎不全の進行とともに、ホルモンの量が低下するので、貧血を起こします。
うちの猫の場合は・・・
一番体調が悪い時は、ふらつき気味で、高い所へジャンプを全くしなくなりました。
今は食欲も戻ってきたため、以前ほど高いところへ登ることはなくなりましたが、ぼちぼちジャンプしています。
数値的にも改善されているため、1階と2階を行ったり来たりできています。
「慢性腎臓病」の一般的な治療法は?
現時点では、決定打となるような腎臓病の薬はありません。
できることは、脱水症状の改善、体内の電解質の平衡を整える、栄養状態を改善する、といった対処療法がメインです。
医師の指示に従って、適切な対応をしましょう。
水分の摂取/皮下補液
腎臓病にかかると、尿の濾過、濃縮機能が低下するため、脱水症状をおこします。
(おしっこがたくさんでて、かつ薄~い)
そのため、たくさん水分を摂取する必要があるため、大好きな水飲みをたくさん置いたり、ウエットのご飯をあげるようにしたり、とできるだけ水分摂取量を増やします。
ただ、腎臓で水分が吸収できないと、たくさん水分をとっても脱水症状が改善されないケースも。
そんな場合は、皮下補液(皮下点滴)を実施します。
具体的には、背中側の首の付根に点滴の針を刺し、直接水分を補給します。
食事療法
腎臓病の場合、食事療法がメインになってきます。
ただし、ステージ4ともなると、あまり勧められず、まずは体重を戻すところから指導されますが・・・。
特に尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cre)の値が高いと判断されると、「低たんぱく食」といわれる食事に替えたほうが良いとされています。
ちなみに、低たんぱくといっても、単純にタンパク質を制限しているわけではなく、リン酸塩やナトリウムの制限、などなど考えられているので、病院で勧められたものをあげてください。
投薬やサプリメント
慢性腎臓病を治すことはできないので、対処療法の薬やサプリメントを与えることになります。
それによって、症状の進行を防ぐ、QOLを上げる、というところを目的としています。
メジャーなお薬をあげておきますが、腎臓の薬の使用自体賛否両論あり、積極的に薦めるかどうか、というところは獣医師や飼い主さんでよく考えて判断ください。
個人的には、効果が期待できるなら是非使いたいと思っていますが、猫のステージや元気次第かなと思っています。
フォルテコール(ベナゼプリル)
腎臓病の場合、濾過機能がうまく働かず、おしっこの中にタンパク質が入ってしまいます(蛋白尿)。
それを抑制し、残された腎機能を守ることを目的としています。
薬価は安価で、錠剤もフレーバー(2.5 mgフレーバーはバニラ風味、5 mgフレーバーはビーフ風味 猫はバニラみたいです)のため比較的好んで食べてくれる子が多いようです。
セミントラ(テルミサルタン)
2014年に発売開始の猫用の腎臓病のお薬で、腎臓病の薬の中で一番有名なものではないでしょうか。
作用機序としては、フォルテコールと似ており、蛋白尿を防ぐ目的で使用されています。
無味無臭の液体なので、飲ませやすい!と評判ですね。
ラプロス(ベラプロストナトリウム)
2017年に新たに発売されたお薬です。
最新のものだけあって、フォルテコールやセミントラが尿タンパクが出ないこと(腎臓の中の糸球体をターゲット)に対して、ラプロスは腎臓全体の機能低下の抑制が期待できるそうです!
え、じゃあ、ラプロス最強じゃん、となるところですが、薬価が他に比べて高い点、錠剤のお薬で飲ませにくい、という点が少しやっかいなようです。
ネフガード
腎臓病の闘病記などでたびたび出てくるサプリメント。
主成分のヘルスカーボンとは植物が主原料の活性炭です。
尿毒症を引き起こす老廃物を吸着するサプリメントです。
サプリなので、Amazon等でも取り扱いがあります↓
腎臓病を治す!AIMとは?
腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!?
~異分野の発想で進んだ特効薬開発~
東京大学大学院医学研究科の宮﨑徹教授による猫の腎臓病に関する特効薬!の研究が進んでいます。
詳しい内容はこちらの記事にて確認ください
猫の腎臓病のことを調べている方なら、見たことがあるかもしれません。
詳しい内容は、素人が解説するよりはきちんとした内容を確認いただければと思いますが、ざっくりと解説しておきます。
AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)とは?
免疫の細胞が作っているタンパク質の一種で、血中にたくさん存在しています。
どんな働きをするかというと、死んだ細胞にくっつき「ここ、死んでますよ!片付けてください」という目印になるものなんです。
猫の場合、腎臓の濾過装置に死んだ細胞があっても、尿中にAIMが流れてこないので、「片付けて」目印がつかないのです。
なぜなら、免疫細胞にくっついているAIMは他の動物の1000倍の力でくっついているから。
そこで、AIMを体内に取り入れる⇒片付ける目印がつく
すると掃除担当の細胞(マクロファージ)が死んだ細胞を食べてくれる、というわけなんです。
そして死んだ細胞がなくなってきれいに目詰まりが取れると、新しい細胞が増殖して、腎機能が回復する、という仕組みなんです。
できるだけ簡単に説明するとこんな感じです。
研究進捗情報
当初、宮崎教授の研究は2022年には新薬としての発売が見込まれていました。
うちの猫も、ギリギリ間に合うのでは!?と知った当時思いましたが、その後の情報が全くでておらず・・・。
どしたのかと思っていた所、このコロナ禍により研究資金が不足し、研究がSTOPしていたというのです。
そんな中、時事通信社の2021年7月11日の記事で、その現状が紹介されました。
「ネコの宿命」腎臓病の治療法を開発 寿命が2倍、最長30年にも 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー
すると、東大に多額の寄付が寄せられたとのことです!
宮崎 徹 教授による猫の腎臓病治療薬研究へのご寄付について
まだ、これに対しての追加インタビューがこちらです
ネコ腎臓病薬、製品化に向け開発再開へ クラウドファンディングで資金調達も 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー
今できることは、寄付か宮崎教授の著書の購入かなと思っています。
↓宮崎先生の著書はこちら!
治験(臨床試験)情報
お薬をつくるためには、人間同様、動物の場合でも実際に使ってみて効果があるかどうかを試す必要があります(=治験)
多少業界を知っているのですが、動物の場合でも思った以上にきちんと試験が行われているようでびっくりしました。
ちょっとだけ業界を知っている私のおすすめお小遣い稼ぎ&健康診断のススメはこちらの記事を
我が家の場合ステージ4ともなると、治験(言葉の定義が難しいですが、新薬開発の試験が治験、それ以外の試験が臨床試験)に参加できるかどうかは微妙です。
そんなわけで、治験に参加したい、と思ったら、治験を実施しているところへ問い合わせるのが一番です。
※2021年8月現在、以前のAIMの臨床試験の手順の不手際に関してのコメントが掲載されていますので、参考まで。
こちらでAIM関連の臨床試験がある場合は掲載されると思いますので、こまめにチェックするとよいと思います。
(規模によりますが、東大病院以外でも臨床試験は行われる可能性は十分あるのでその他の地域にお住まいでも参加できる可能性はあります!)
まとめと今からできること
おそらく、この記事を読んでいただいている方は、ご自身や周りの猫ちゃんが腎臓病にかかっている(かかっていた)方だと思います。
効果的な予防方法、治療方法は、AIMの進捗を待ちましょう。
現在できることは、健康的な食事や生活をさせてあげる、こまめに健康診断を受けさせてあげる、に限ります。
この情報が、どこかの猫ちゃんと愛猫家さんの手助けになれると嬉しいです。